歌は導き、コールは祈りだ。修行の道を歩み続ける“菩薩”たち。

京都駅からほど近く、400年以上の歴史を持つ岸寺を拠点として娑婆に顕現している3人の“菩薩”がいる。浄土系アイドル「てら*ぱるむす」として活動する観咲千世乃、文殊たま、勢崎至恩だ。2016年に開催された仏教×アートフェス「十夜祭」の企画として顕現し、京都の美大生たちを中心とした運営で活動してきた彼女たち。その独特なグループの成り立ちや活動への想い、彼女たちの今までとこれからをお伺いした。

(この記事は2019年3月に行われたインタビューに基づきます。4月下旬掲載予定の2020年インタビュー記事に続きます。)

 


 

スタートは“炎上”からだった。企画で生まれた「浄土系アイドル」 。

まずはじめに、それぞれの自己紹介とグループのコンセプトをお願いします。

左から 文殊たまさん/観咲千世乃さん/勢崎至恩さん。

観咲千世乃(ちせのん):赤色担当、観音菩薩の「ちせのん」こと観咲千世乃です!よろしくお願いします。

文殊たま(もん):白色担当、文殊菩薩の「もんちゃん」こと文殊たまです。

勢崎至恩(しおてん):紫色担当、勢至菩薩の「しおてん」こと勢崎至恩です。

お寺のイベントでデビューしたとのことですが、具体的にはどのような流れで顕現することになったのでしょうか?

もん:そうですね、お寺のイベントというのも特徴的なもので…割とそういうアートの目線から仏教を題材としてるイベントだったんですけど。2016年に龍岸寺と芸大生を中心とした学生さんがコラボして何をしようかってなった時に、1人の女子大生がアイドルを作りたいって言ったのがきっかけで生まれたのがてら*ぱるむす。その…どっから話そう?

ちせのん:「十夜フェス」かな。十日十夜通してお念仏を唱えるお寺の法事があるんですけど、最近はそれをやるお寺も少なくなってきていて。その文化を繋ごうとアートと組み合わせて新しいイベントとして学生さんが作られた「十夜フェス」っていうイベントが2015年から始まったんです。その翌年、2年目の十夜フェスで先程の女子大生がこの龍岸寺に来て始まった「お寺×アイドル」のプロジェクト、要はイベントのためのアイドルとして始まりました。

もん:ほんとは3日間限定の予定だったんですよ、てら*ぱるむすって。でも色々あって、2016年秋のイベントでデビューした初期メンバーの5人が綺麗な形でしっかり終われるようにと2017年春に卒業ライブをさせてもらって。同時に2期生を募集しはじめて、同年秋に本格的にアイドル活動をスタートさせました。

秋のデビュー時、そして春の卒業ライブで顕現していた1期生たち。

そのタイミングで終わりにせず、2期生へと続けたきっかけは何だったのでしょうか?

もん:結構ファンの方というか会いに来てくださる方が思った以上に多かったこと。それとやっぱりその3日間といえどそのイベント、そして「お寺とアイドル」ってのが割とメディアの目に止まって、そこでワッと、まあ直接的な言い方をすると炎上したんですよね。で、そこで終わらせてしまうのも悔しいし、せっかくならちゃんと活動して仏教文化をしっかり知っていくということも自分たちの目的とつつ、炎上だけで終わらせたくなかったみたいな気持ちもやっぱりどこかであって。という流れで2期生を募集して再スタートしました。

先日はネット上でも「ナムい」がバズっていましたが、世間の反応は如何でしたか?

もん:先日の「ナムい」がバズったきっかけは知恩院さんが使ってくださったっていうのがきっかけで、正直私たち直でというより「浄土宗の総本山がナムいって使ってる、なんだ!?」っていうのでネットがザワついてたんですね。そのツイートを私たちがいいねをしに行くから余計になんかきたぞ!?って。(笑)

ちせのん:知恩院さんが発信したことで、ぱっと見胡散臭そうなアイドル…私たちが言うよりも意外とちゃんとしたものとして受け止めてくださる方が多かったなって印象はあります。中には「世の中終わったな」みたいな意見もありましたけど。でも思ったよりみんな使ってくださったということは、どこかしら興味を持ってくれるきっかけになれたのかなと思いますね。

運営の主体は学生。皆で作りあげていくチーム

衣装のデザインは仏像のモチーフや菩薩に関連するエピソードから表現されている。

衣装や振り付けなどにお寺文化の要素が盛り込まれているのも特色ですが、どなたが制作されているのでしょうか?

もん:芸大生の皆さんですね。この衣装も、コスチューム制作を学んでる学生さんが作ってくださってます。

ちせのん:いろんな方が関わって作りあげてくださるって感じですね。振り付けも1曲目以外はプロデューサーが。

ほぼすべてをプロジェクトの内で制作されてるんですね。

ちせのん:いやほんとに!割と身内で何でもできる!

もん:「君は刹那スピード来迎」って歌詞の振り付け、この動き後光が射してるんですよ。そういった要素も盛り込んでくれています。

プロデューサー:「ニルバーナ恋バーナ」は別の方が振り付けしてくれたんですけど、それ以外は全部、メンバーの力も借りながらやっています。

物販に出ているグッズなども全部学生さんが?

もん:そうですね。てら*ぱるむすの家紋があるんですけど(衣装の肩にある蓮の装飾を見せながら)これも学生さんがレーザーカッターで。大学の力ってすごいんだなあって。

木の装飾まで!様々な設備で一層凝った作り方ができるのも学生さんが企画する特色かもしれませんね。

もん:デザイン各種もそうですね。てら*ぱるむすのロゴもデザインしていただいてますし、MV監督から絵コンテから撮影から全部学生さんの力で。大人が関わってるところといえば、仏教的な知識のある池口ご住職であったりだとか、楽曲のプロデュースをしてもらってる方とか。

ちせのん:いまのところ(2019年2月当時)作詞に関してはほぼ自分たちで、「ニルバーナ恋バーナ」は池口ご住職に書いていただきました。なのでほんとに学生さん以外で関わっているのはご住職と、作曲家さんと、あとはファンの方たちぐらい…。

もん:あとは他のお寺のお坊さんとかかな。

龍岸寺さんだけでなく、他のお寺の方々も含めてみんなで作られているといった面もあるのでしょうか。

もん:池口ご住職がすごく顔が広いんですよ。いろんなお寺の方がここに集まってくる。池口さん自身もいろんな展覧会とかイベントを企画されているので、私たちはそのおこぼれに預かっている感じ。

しおてん:ほんとにそうです。

本当に広い幅の方々が集結してこの形が作られているんですね。

ちせのん:そうなりますね。私たちもグッズに関わってたりはするんですけどまあ、歌って踊ってるくらい…。

(お子さんが横の廊下を通って)いまのは…?

もん:池口さんの娘さんと息子さんです。ほんといい子たちで、彼女彼らもサポートしてくれてます。

ちせのん:たまにダンスのダメ出しとかしてもらう。「そこ揃ってな~い」って言われて、ハイ先生!って。

もん:ダンスの練習とかはお寺の本堂でするんですけど、鏡が無いのでどうしても誰かに見て欲しいって時に見てくれるんです。ここ揃ってない、あそこ揃ってないって。すっごいね…ありがたい。

ちせのん:そういった面でもいろんな方に協力していただいてるね。

龍岸寺・本堂。練習や不定期で開催されるライブの前など訪れる度に揃ってご本尊へ十念(お経)を唱える。

そういえば、現体制の文殊さん、観咲さん、勢崎さんはそれぞれ加入時期が違うと伺いました。3人体制でそれぞれ時期が違うのも珍しいかと思うのですが…。

もん:私は1期生でデビュー当時からで、ちせのんが2期生の始まりで…。

しおてん:私2.5期生?

ちせのん:2.5期生!

もん:しおてんの加入からは何期生っていう表記をやめよっかという話をしていたんですけど。実は入ったの最近だよね。

しおてん:いや、でももうそろそろ1年経ちますね。私、元は衆生(ファン)側だったんです。割といろんな取材の人に言ってるけどあんまり取り上げられない(笑)

ちせのん:今も衆生さんでは割と知ってる人いるよね。

しおてん:だから何人かは私を衆生と見ないようにがんばってる人たちが。

もん:しおてんだってチェキ撮ってたもんね。しおてんの初チェキ私やったっていう。

ちせのん:えっ私一緒に撮ったっけ、記憶が…。

しおてん:ごめん、1回も撮ってないわ。

ちせのん:今いっぱい一緒に撮れるもん、いいもん~!!

「サラソウジュデイト」のMVにもちらっと出演されていましたよね。あれはどのタイミングだったんですか?

しおてん:そうですね、最初はマネージャーとして参加していて。で、ちょっとメンバー加入前の頃に匂わせようかみたいな話になって。

もん:そうそう、彼女のデビューを2月の半ばにしようかって、で、MVの公開は1月。匂わせというか、伏線というか。

ちせのん:撮影自体は12月の頭ぐらいだったんですよ。

しおてん:寒かったな~、朝8時ぐらいに道路に座ったり寝転んだり。

ちせのん:やっぱり服があるって素晴らしいなって…。人間の文化、文明に感動しました。

もん:だってちせのんが一番ノースリーブ…。

しおてん:ちょっと唇紫がかってたもんね。

ちせのん:あれはありがたい体験だったと同時に、本当に人間の装備は素晴らしいって気付けましたね。

もん:やっぱそういうとこ、究極の1枚の布だけの如来様たちってやっぱり悟りに至ってるんだなあって思うとね。まだまだ修行をしないとなってのは感じる。

ちせのん:勉強になったMV撮影でした。

しおてん:私はまだちゃんとMV出たこと無いのではやく体験したいですね。

文殊さんはダンス、観咲さんはイラスト、勢崎さんは彫刻とそれぞれがクリエイティブな分野を活動に取り入れているのも特徴的ですよね。

メンバーが作成した小道具がワンマンのオープニングアクトで競りにかけられることも。

もん:私はお浄土(デビュー前)でクラシックバレエをやってたんですけど、アイドル的なダンスは初めてで。全員未経験だよね?

ちせのん:そうだね、卒業したメンバーもみんな未経験者で。阿弥陀様に言われるがまま娑婆の世界に来てアイドルとしてやってる。

クオリティが高いので皆さん経験者なのかと思っていました。それではダンス以外で、この形で顕現してから一番大変だったことって何でしょうか?

もん:これが一番大変だった、ってことは無くて…常に大変。

ちせのん:セルフプロデュースでやってるからには、事務所所属の演者さんよりはシンプルに作業量というか種類が増えるので、そこが大変だったりはする…。あれやらなきゃ、これやらなきゃ!で同時にいっぱい進んでいくみたいな。

もん:今回初めて丸々1ヶ月ライブのお休みをいただいて制作に注力してるんですけど、でもやっぱり休んでしまうと私たちが「あれ?ライブ無いよ?」ってなっちゃう。ライブが無いことに対して寂しいので…。

ちせのん:バランスが難しいっていうのはすごいありますね。

近くにいても距離があっても。皆で作っていく「アイドル」というかたち

てら*ぱるむすさんは普通のアイドルライブだけでなく、学校の行事などにも度々出演されていますね。京都でこういった活動をされているということで、地域との距離も近かったりするのでしょうか?

ちせのん:龍岸寺を拠点に、地域のお寺に属してるというかたちなのでそういう面はありますね。

しおてん:今はお寺に足を運んでくださる方の年齢が徐々に上がってきているんですが、若い人にもお寺に来てほしいな、興味を持ってほしいなという働きかけをしています。

ちせのん:学生中心でプロデュースや運営をやってるっていうのですごい面白がっていただいたりとかもして。

しおてん:中学校とかでライブをすると、体育館のステージで椅子が並んでて普段のライブとは雰囲気違ったり。でも割と喜んでいただけてるよね。

もん:元々お寺が好きで龍岸寺のファンで、って方がてらぱるをきっかけにアイドル好きになったり、逆にアイドル見ていた人が対バンをきっかけにてらぱるを見てのめり込んで、気づけば観音菩薩を巡っていたとか…聞きますね、ありがたいことに。

ちせのん:全国にあるからね、実質てらぱる聖地。

もん:お寺じゃなくてもね、博物館とかで展覧会していたりもするから。

ちせのん:名古屋とか遠方の衆生さんにも「こっちのちせのんに会ってきたよ」みたいにリプライでいただいたり。

もん:割とね、推し菩薩がどうのこうのって面白いなって。新しい視点でのお寺文化への入口になれてるかなって思います。

最後に、てら*ぱるむすの皆さんが思う「良いアイドル活動」ってなんですか?

もん:これはみんなバラバラかもしれないね。

ちせのん:やっぱり、関わっている人みんながハッピーになれるような活動っていうのは大事かな。私たちは運営的なこともやってたりはするんですけど、それぞれメンバーとしてもやりたいことをやれるようにというか。メンバーもスタッフさんもファンの方も、みんなで一緒に楽しみながら「てら*ぱるむす」という作品を作っていけたらいいなと思います。

もん:私もちせのんの考え方とほぼ一緒やけど、追加するとしたら「ぶつかり合える」関係でいたいってことかな。メンバーやスタッフひっくるめて、喧嘩しあえるぐらいの仲になってる状態で活動できるのが大事かなって。

ちせのん:お互い意見が言える状態じゃないと楽しくないやんね。

しおてん:発起人でありプロデューサーである子も私たちに「上下関係作らないで!」って言ってくるような人で。皆で作ってる意識が強いからプロデューサーっていうよりプランナーなのかな。

もん:自分がやりたいことを内に秘めるんじゃなくてしっかり外に出していける活動。それを受け入れてくださるファンの方も大切にしていけるし、よく運営・アイドル・ファンの3つの関係性のことが言われるけど、それを上手く繋げて良い三角関係を成立していけるかたちが良いのではと思っていますね。

ちせのん:ピラミッドじゃなくて三角関係なんだよね。

もん:そう。もし喧嘩することがあったりしても自分たちのやりたいことをしっかり言い合って、たまには誰かが折れることもありつつ組織全体が新しく更新されていくような。

しおてん:良いものを作りたいって気持ちはみんな一緒だからね。私は気軽に来てもらえるグループがいいなって思っています。いまのお寺の活動と一緒でそういった雰囲気作りから心がけるというか。楽しむためにお金を払ってもらってるので、頑張っているところを見せる以上に絶対楽しんでもらえるようにしたいですね。

もん:てらぱる自体が根底はクリエイター的な考え方というのもあるとは思うんですけど、さっきちせのんが言ったように「みんなで作りあげる作品」だと思っているので。ファンの方と私たち…メンバー、運営、ほか関わってくださる方たちまで含めて全員で楽しみながら作り上げていくアイドル活動にしていきたいですね。

 


てら*ぱるむす

「煩悩多き衆生(ファン)とともに修行する」がコンセプトの浄土系アイドル。学生中心に運営・セルフプロデュース。

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