いちヲタクからセルフプロデュースを経て次の世代の運営に。変化するポジションからアイドルを見続けた汐垣飛鳥が思う在り方。

2017年から2019年2月までセフルプロデュースユニット「オタクネーション」プロデューサー兼メンバーとして活動し、その後運営陣としてアイドルグループ「Drop Maker」のプロデュースを行った汐垣飛鳥。ヲタク側からアイドル、そして運営へと様々な角度でアイドルを見続けた視線から体験談を通して“アイドルのつくりかた”を伺った。


 

ヲタク→アイドル→運営に。違うやり方、違う視点で「アイドル」を見続けた

最初に、汐垣さんについて自己紹介をお願いします。

汐垣:大学に通いながら1年7ヶ月「ただのドルオタがアイドルを始めたらどこまでいけるかという自由研究」というコンセプトでセルフプロデュースユニット「オタクネーション」としてアイドル活動をやったのち、プロデューサーとして「Drop Maker」というグループの運営をしていました。

体制変更もありながら「ヲタク」(オタクネーションファンの呼称)と共に駆け抜けた「オタクネーション」

まず汐垣さん自身もメンバーとして活動していた「オタクネーション」時代についてお伺いします。こちらは全くアイドル未経験からのスタートだったと拝見しました。

汐垣:はい、もともとは本当にただのヲタクだったんですけど、機会あってとあるプロデューサーの方とお話ししていた時に「そんなに話せるならアイドルプロデュースしなよ」って言っていただけて。真に受けてすぐに活動の準備を始めました(笑)

もともといちヲタクだった経験あっての挑戦だったのですね。

汐垣:パフォーマンスもオリジナル曲に加えて、ちょっとメジャーから外れたコアな曲のカバーで「あ、ドルオタだからこういう曲も知ってるんだ」って思ってもらえるような曲を演ったりしていました。親しみやすい、コールが入れやすいなど言っていただけることが多くて、自分自身もヲタクだからこそ身近に感じてもらえるような活動が出来ていたと思います。

最後のワンマンライブで「オタクネーション」としての区切りをつけ、その後Drop Makerの運営としての活動が始まりました。こちらはどのようなコンセプトだったのでしょうか?

汐垣:「Drop Maker」はEDMやトランスミュージックを取り入れて「ヲタクをパリピにする現場」というコンセプトでグループ作りをしました。 最初は「アイドル」+「EDM」+「エモい」のコンセプトで募集していたのですが、先行するグループさんや自分たちの現場を見てもっと新しい道を探していかなきゃと思って。結果さらに踏み込んだテーマになりました。

それぞれが全く違った方向性だったのですね。

汐垣:スタートのしかたというか、活動の切り口も全然違いましたね。 「オタクネーション」はゼロから始めて資金もなかったので、最初の方は竹下通りで衣装買ったりカバーから始めたりしてだんだん曲や衣装も発注するようになって…といった成長ストーリーだったのに対して、「Drop Maker」は私とマネージャーでそこそこまとまった資金を出し合って最初から楽曲も振り付けもお金をかけた活動にしてみました。 というのも、先ほど話したように過去に界隈が似ているグループさんがいらっしゃって。EDMとかDJ系でやってたグループさんだったんですけど、同じ方面をやるなら負けたくない、勝ちたいって気持ちが強かったんです。なので、今度は人だけじゃなくて楽曲などの面でも初めから作り込んで勝負してみようと思って制作をしました。

「自分たちをプロデュースする」と「ひとをプロデュースする」に感じた違い

汐垣さんご自身がメンバーとしても活動していた「オタクネーション」と完全に運営サイドとなった「Drop Maker」、プロデューサーとしてのやり方も違いがあったと思います。まず、メンバー募集の時に変化はありましたか?

汐垣:「オタクネーション」の時は一緒に始めませんか、という募集でスタートしましたが、「Drop Maker」の時はグループとしてのコンセプトを提示しての募集になりました。 コンセプトを見て惹かれたっていう子や、私がしていた活動を見て応募してくれた子もいましたね。

グループとしての具体的な方向性や自分の活動の傾向を出した方が応募する側も判断材料が多くて嬉しいですね。メンバー採用の時はどのような点を見ていましたか?

汐垣:どちらのグループでも一番重視したのは「人間性」です。コミュニケーションを取れるか、連絡がちゃんとできるか…っていうのは、24時間以内にちゃんと返信してくれるとかある程度しっかりした文体でやりとりできるとか、くらいなんですけど。 ビジュアルの良さとかよりも人として自立してるかどうか、お仕事として一緒にやっていけるかを見ていましたね。

メンバーが揃った後、活動していく上でパフォーマンスメンバーかそうじゃないかでの違いは感じましたか?

汐垣:そうですね…セルフプロデュースの時と違って、自分自身がメンバーじゃないのに指示を出してもちゃんと真に受けてもらえてるのかなとかすごい考えてしまったり。間接的に人を動かすこと、動いてもらうことの大変さを実感しました。 自分は活動の経験でわかっていることも言葉だけじゃ伝わらないこととか多くて。レッスンも毎回同行して、ライブも毎回現地でパフォーマンスを見て反省会もしてから帰るようにしていましたね。

メンバーかプロデューサーか、立場の違いで伝わり方も変わりそうですね。

汐垣:難しかったですね。ちゃんとした事務所を立てての活動ではなかったので、一層のことメンバーや保護者の方からちゃんと信頼してもらえるようにならないと、しっかり見られるようにしないとという面は徹底して意識していました。 なかなか上手くいかなくてすれ違うこともあって、その度にちゃんと話してコミュニケーションをとって解決するように努めました。

メンバーとしてのコミュニケーションと運営としてのコミュニケーション、違いや難しさを感じた点はありますか?

汐垣:ありましたね。やっぱり運営側がどうしても目上の存在になるじゃないですか。だから運営の立場の方がメンバーから話しづらそうなことはありました。 「オタクネーション」としての活動では、お互いにメンバーだから意見を言えることもあったと思うんですよ。本当になんでも言われてたんです、良い意味で。個人の差はあるとしても運営という関わり方だとそれが大きく減ったので、立場の違いで言いづらい事も色々あったんじゃないかなと思います。

その中で運営していくにあたって、汐垣さんがもっとも厚く取り組んだ面を教えてください。

汐垣:業務連絡などの事務は「オタクネーション」時代から着いてきてくれているマネージャーがやってくれていたので、私はコンセプト固めやメンバーとのコミュニケーションなどプロデュース面に集中することができました。 特に自分ではない人のモチベーションをどう維持するか、ヲタクへの魅せ方はどうするかというところはメンバーの活動やグループを存続させる為に以前よりも考えてやるようになったと思います。

その中で、もともとの理想とギャップが生まれてしまったことはありましたか?

汐垣:先ほども出たように伝えることの難しさですね。これは本当に運営サイドだけで解決して済む話ではないので、とりあえず会って話してなるべく口を出さずに考えを聞いて、そこから思ったことをお互い言い合っていって…とするしかありませんでした。 でもそれでもモチベーションの面とかは結局本人次第なのでなかなか上手く行かないことがあって。メンタルが強くない子だとステージの前に弱気になっちゃうこともあるんですけど、私とマネージャーは「絶対今日大丈夫だから!」っていうタイプで。その差を合わせながらモチベーションあげてかなきゃいけなかったわけだから、その摩擦で解散に繋がった距離感が出てしまったかなと思っています。

アイドルと運営の視点から見る「グループ運営」のありかた

「Drop Maker」で再度のグループ運営を始めた汐垣さんですが、「オタクネーション」での経験が活きたと感じた点はありましたかか?

汐垣:運営の面で言うと、イベンターさんをはじめ関係者の方との交流が既にあった点はゼロから始まった「オタクネーション」とは気持ちも大きく違いましたね。それでも初めましてのイベンターさんのライブに出る時は結構勇気が必要なんですけど、そういった時にも相手がこちらを知っていてくださったりとかもして。自分のやってきたこととかを発信するのは大事なのかなと感じました。 あと、「オタクネーション」の時に一緒に活動し始めたマネージャーが最初はビジネスメールの書き方も全然知らなかったので、そこの指導から始めたんです。オーディションをする頃にはそのスキルも上がっていたので、関係者さんやオーディションのやりとりなども安心してもらえたかなと思います。

企業としての事業でなくても、そういった面での姿勢はとても印象に関わりますね。

汐垣:私が前にソロで活動してきたタイミングにたくさん運営側からのお誘いをいただいたことがあったんですけど、中にはあからさまに「あ、騙しにかかってきてるな」って感じる怪しいところもあって。そういうところはその後の活動を見ていても上手くいかないケースが多かったので、ビジネス的なやりとりの印象はよく見ていました。

そういったお誘いや自分からオーディションの参加をする時に選ぶ時のポイントはありますか?

汐垣:ビジネスメールの文面以外だとSNSは見た方が良いですね。グループのアカウントならちゃんと更新しているかとか、運営さんのアカウントだったらグループの名前を使ってる場で下品すぎることを言ってないかとか。言ってたら私は関わり方を気をつけますね。 最近は私含め元アイドルさんがプロデュースしている形も多くなってきましたよね。そういう方ならその方の所属などの実績だけじゃなくて、その人自身がどういう方なのか、どういうことを頑張ってきた方なのかを自分なりに調べて行った方がいいかもしれませんね。あとはどのようなヲタクが付いているかを見るのもすごく大事だと思います。

どの立場でも自分自身で活動に取り組む、そして一生懸命に

最後に、汐垣さんにとっての「良い活動の仕方」とは何ですか?

汐垣:結局はその子自身がアイドルとして活動していくので、自分で活動に対しての気持ちを上げていくのが大切かなって感じますね。モチベーションや自己肯定感を上げたり、色んなことに興味を持って自分から行動してみたりとか。セルフでなくどこかに所属してるとしてもその中で自分なりに自分をプロデュースができて、さらに一生懸命必死にアイドル活動ができるような子は必ずお客さんも付いていくと思います。 運営の方は…メンバーと運営という視点だけではなく、人間としての相手を育てていくという意識もあった方がいいのかなと。人と人との交流としてどうすればいいのかを学んでいくのが大事だなと思いますね。 とにかくグループ全体としてまずはモチベーションが維持できなければ続けていけないことだから、そのためにできることをどのポジションであっても考えていく必要があると思います。

 


汐垣飛鳥

2017年〜2019年「オタクネーション」として活動後、2019年8月〜2020年1月「Drop Maker」プロデューサーとして運営を務める。現在は「懸垂女子」としてトレーニングジム設立を計画中。

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